
日本時間6月9日正午、英国の総選挙で保守党の単独過半数割れが決定的となった。
この総選挙は現政権が昨年国民投票で決定した英国のEU離脱をより強硬に進めるためわずかに単独過半数を上回る議席数を国民に信を問うという名目の元、議席数をさらに伸ばし離脱交渉を円滑に進めたい意図で前倒して行われた。
しかし、結果的直前に相次いだ英国内のテロの影響もあってか保守党は議席数を減らし、単独過半数を割り込む結果となってしまい、メイ首相の求心力が低下していることを露呈してしまった。(メイ首相の保守党政権は財政緊縮の一環で国内のテロ対策予算を削減していたため責任を問われていた)
まだ連立による過半数議席の確保の目はあるものの、既にメイ首相が辞任する可能性との報道もあり、EU側との限られた離脱交渉期間の中、当初目指した英国に有利な形でのEU離脱(ハードブレクジット)は軌道修正を迫られることは必至となってしまった。
すでに決定している英国のEU離脱自体が取りやめになることはないであろうが、連立政党や野党の意見を組み入れたEU寄りのマイルドな離脱案であればそもそも何のためのEU離脱なのか曖昧になってしまい、より深刻な政治的不信を招きかねない懸念がある。
昨年の英国のEU離脱、米国でのトランプ大統領の誕生、仏での大政党の所属ではないマクロン大統領の当選といった一連の先進国の流れはポピュリズムの台頭ともとらえられるが、要するに各国の国民が自国に蔓延する閉塞感に飽き飽きしてしまい、”政権なんかだれがやっても一緒だから今の状況が変わればいいかな”という心理を反映しているということである。
思い返せば日本でも自民党から民主党が政権を奪取した2009年もこのような蔓延する閉塞感がなんとなく変わればいいといった空気だったが、民主党政権は東日本大震災もあって日本の閉塞感を払拭するどころか、2012年まで「暗黒の3年」といわれるお粗末な政権運営で国民をさらに暗い気分させた上に金融市場の停滞も招いてしまった。
この英国総選挙結果によって英国ポンドは対円で1.75%下落したほか、対米ドルでも2%下落している。現在のところ株式市場への影響は限定的なものの、英国のEU離脱方針が不透明になったことで今後の国際金融市場への悪影響が懸念される。
先進各国の官製相場によって上昇を続けてきた株式市場がかつての日本のように”民意のあきらめ”によって停滞することが懸念される。