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『現物資産』といえば、その代表格は不動産だ。英のEU離脱で、ロンドンの不動産が前年比公表ベースで10%下落、実質ベースでは更に下落しているとまで言われている。

 

さて、人口減少により空き家が増えるとされている本邦では、2015年の相続税改正で東京・名古屋・大阪近郊でのアパマン新築が増えつつ在り、しかもこれに伴う金融機関からのローン残高も堅調だ。

 

保有資産でこれらを購入した場合、単なる現物資産であるが、銀行などの金融機関によるローンでこういったものを購入した場合、資産と同時に返済債務という負債も膨張するのでレバレッジを使った購入であり、純粋な資産形成よりも遥かに高度な資産管理技術が必要になる。

 

特にこの分野では、一括借上げを提供する管理会社、更には貸出難に悩んでいる金融機関という新しい利害関係人が参画してくる。
管理会社に至っては確かに『10年一括借上』等をしてくれるものの、どんどん競争相手が増える結果、空き室率上昇の現況では、『賃料の引下げ』が当然提案される。

即ち、管理会社は10年間借上げをすることを約束しているだけで、『定額』ではないのだ。

 

結果、相続税対策で借金してまでアパマンを手に入れても、変動する賃料のリスクは相変わらず所有者に残存する。
しかも、『現物資産』は金融商品ではないので、金商法による厳格なリスク説明はなされず、『10年一括借上げするので大丈夫です』等という説明がなされる。

繰り返しになるが、購入する投資家側は、家賃収入が保証されていると説明され家賃が固定化すると誤解する一方、プロである建設兼不動産会社側は、家賃収入という収入形態のみを保証しており家賃は変動して当然という論理だ。

バブル期の住専問題や各種金融機関の不良債権問題までの発展は見込めないものの、個人の収入が拡大しておらず、更に、日銀の基準貸付金利がゼロに近いマイナス圏であるにも関わらずアパマンローンが1~4%という金利環境である中、『現物資産』といえどもレバレッジをかけてまで『相続税対策』『都市部への人口流入』という命題のために複雑なリスク管理を選好するのは小職の立場では行い難い行為である。