ダウンロード (5)

ドナルド・トランプ氏が、第45代合衆国大統領になることが決定した。
また、共和党は、上・下両院で過半数を占め、民主党に完全勝利した。

株式・債券といった有価証券市場のみならず、金も含めたエネルギーなどの各種コモディティー市場でも、この大統領選結果が確定するまで大きな変動を観測した。

今回は、この変動がなぜ起きたのかという事を分析してみたい。

彼らのように、比較的高度でかつ厳格なリスク管理規定が存在する場合、こういった既知のイベントがあるとは言え、過度な変動が想定される場合は、予めその予想される変動に応じて、持高の圧縮が事前に行われる。

典型的な指標としては米国株式市場におけるVIX指数である。

大統領選のおよそ1週間前には予想されている変動率が上昇し、少なくとも米国株式市場でリスクを保有していた市場参加者は、リスク圧縮に同意していた筈である。

この手の数値は、債券・通貨・コモディティ市場においてもそれぞれ存在する。

昨今の厳格な金融行政は、過度なリスクを金融機関が取らないように指導しているので、得てしてこの様な環境において同時期に同様のリスクを持っている市場参加者は同じ様な行動を取りやすいのである。

こういった側面からは、どちらが大統領にあるかを占って、それに対して投資行動を行う様な個人投資家は実は少ない。

良く、ドナルド・トランプが大統領になれば、金融市場は混乱するから株式が下落する等と言うコメントを散見するが、それらのコメントにおいては「いつの時期に、どれくらい」と言う時期や数値が抜けている時が多いので、相反するコメントを見受けるとどちらが正しいか不明になってしまう。

相反する結論が同時に存在する事は、現実の世界ではありえないので実際問題、金融市場において結果を予測して当てる事で収益を確保すると言う投資行動は極めて少数派なのだ。

したがって、今回も含めて、予め想定されていたイベントによって大きな変動がもたらされるのは、
1:事前に大口の市場参加者が持高の圧縮を行なっていた事

2:大口の市場参加者は当日のイベントではリスクを拡張できず、流動性が低下する事

3:リスク愛好者の気まぐれな売買が高頻度で行われる事

以上3点により、イベントの結果とは関係のない変動が観測されたに過ぎない。

この日の変動が将来を占う事はないのである。