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現金が『現物資産』に属すると聞くと、ピンと来ない人も多いのではないでしょうか?

『金融資産』とは、株式の配当・債券の金利の様に、第三者に資金を託し、その託している間、本来持っていた自由権を自ら制限することで何らかの対価を売る『資産』を意味します。そういう意味では取引の相手方に預託している資産であるリゾート会員権、生命保険、更には銀行に預けている現金(`預金`)は『金融資産』といえるでしょう。

反面、『現物資産』とは、自らが所有していて、所有権の使用・処分・収益の全てをいつでも自由に行使できる『資産』を意味します。即ち、『金融資産』と異なり、所有しているだけでは何ももたらさず、収益を確保するために第三者に占有権を委ねて貸出たり、自らが使用することで何らかの利益を確保するものを定義します。『現物資産』の多くは、実際に処分を行おうとすると即座には行えず、この点が『金融資産』と異なる。『実物資産』とも言われる由縁です。

 

さて、上の定義によると、持っているだけでは何も産まない不動産・絵画などの動産・各種コモディティは勿論、現金として持ち歩いていて銀行に預金していないものは『現物資産』であるとも言えます。

先月上旬、米大統領戦の最中に、名目GDP世界第7位のインドが、高額紙幣の突如の流通禁止を唱えたのは記憶に新しいところですが。中央銀行の統計から分析すると、流通紙幣の85%がその対象になったという措置です。これにより、高級車や貴金属が突如買い上げられ、オンライン決済のチャージ額が突如4倍に膨張しました。銀行への高額紙幣預入が増えつつ在り、実際にマクロ経済への影響はないと判断しています。

 2018年を目安に500ユーロ紙幣発行停止を予定しているEUR、2017年1月より現金による決済上限をEUR2,500からEUR1,000へ引下げをするスペインなど、『現物資産』における『現金』にますますの抑制が加えられています。

 

 日本では、欧米のような小切手の文化がなく、後払いをきちんと行うことによってクレジット(与信)成績を保つという文化が余り広がっていません。結果、現金決済は未だに高い水準を維持しています(1000円以下の小額決済で85%、5万円以上の高額決済で35%)。

 これだけの現金決済比率が高い環境であればそう簡単に導入はできないのではないかとも思われますが、1946年に”新円切替”として預金封鎖を実際に行ったことが在るだけに、マイナンバー制で少なくともストック(資産)を確保できるようになった政府としては、以前よりもより効果的に、銀行に在る預金という『金融資産』(マイナンバー付)とそうではない銀行外にある現金という『現物資産』は、何らかの政治的措置で技術的に類別可能です。

実際に、インドでは、銀行の窓口・ATMに監視カメラを設定し、高額紙幣への規制発表後、殺到する人々を判別し、後日大量の高額紙幣を突如預入した方々から順番に、任意のお問い合わせをしています。
仮にこの際マイナンバーがあれば訪問先リスト並びに洗い出しは技術的に極めて容易に行えるでしょう。
結果、多くの『現物資産』においては、流動性に問題の在る不動産を除くと、デリバティブではない一部のコモディティ(保管の問題は除く)や規制が不明な仮想通貨が残った選択肢になります。

勿論国による管理は国による保全措置という安心感も得られる一方、何らかの形で自由権が規制されうる余地が残るので、納税は当然行うとしても資産形成において自由資産を維持しようというモチベーションは一定程度存在します。