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100年の歴史を持つロンドン金値決め価格が昨日で終わりを告げ、新たにLBMA Gold Priceが本日から始まった。この大きな変革に至るまでの流れと、新たなLBMA Gold Priceの詳細を下記にまとめた。 – 本記事はBullionVaultが執筆しています。

ロンドン値決め価格(フィキシング)とは

  • ロンドン値決め価格は、金專門市場において、最も大量の取引が可能となる一つの価格。
  •  1日に2度(10時半と15時)に、ブリオンバンク自身の注文と顧客の注文を集め、需要と供給の状況に応じて決定。
  • この価格は、値決めを行うブリオンバンクと顧客の注文を含むものであり、市場全体の需給状況を反映したもの。
  • 値決めが行われた後にこの価格は公表され、この価格でブリオンバンクとその全ての顧客の取引が行われる。
  • そのために、商業取引や投資商品で利用され、中央銀行の金準備やETFの残高の評価をするために使われる世界の金の指標。
  • 日々午後に発表されるロンドン金値決め価格(PM Fix)は、1919年から世界の金の指標。
  • ロンドン値決め価格で取引をしている最大のブリオンバンクは、一日平均230億ドル規模の取引を行い、市場全体の取引は、この3倍から5倍の規模。この取引の大部分は金の値決め価格で行われている。

ロンドン値決め価格の仕組

  • 金の値決めのメンバーは、ブリオンバンク4行(バークレイズ、HSBC、ソシエテ・ジェネラル、カナダのスコシアバンクの子会社のスコシア・モカッタ)。
  • 他の派生商品や現物市場と平行して取引が行われ、オークションの初めに値決めのメンバーの議長がドル建て価格を提案。
  • それぞれのブリオンバンク4行は、この価格ではそのブリオンバンクが持つ注文が、ネットで購入者か売却者なのか、そのブリオンバンクの注文は需給バランスがとれているために、(no interest:取引の必要がない)ことを告げる。
  • もし、このブリオンバンク4行間で、ネット売却者が多ければ、議長は価格を引き下げ、その反対にネットで購入者が多ければ、価格を引き上げて、需給のバランスを取り、実際の需給のバランスに応じて、このバランスが取れるまで価格の調整を行う。

なぜ値決め価格は終わりを告げたのか

  • 2014年に業界関係者に行われたアンケートでは、ブリオンボールトを含む70%以上が現行の値決め価格に満足していると回答。
  • しかし、規制当局などの市場外の関係機関は、100年の歴史を持つ値決めは時代遅れのものと見ていた。
  • そして、値決めメンバーによって決められる仕組みがどのように管理されているかにも懸念が挙がる。(メンバー間の電話会議で行われることから、オークションの記録が残らないことなど)。
  • そのような中、2014年5月にバークレイズ銀行は2600万ポンドの制裁金を英国金融行為規制機構(FCA)によって課されるという、ロンドン金値決め価格に関わる不正事件が発覚。これは、値決めメンバーとして、社内で十分な社内手続きの管理がされていなかったこと、そして、この銀行内の一人のトレーダーが、顧客と利害相反があった取引のために、値決め価格を不正操作するために注文を出したことに対したものであり、FCAは報告書においても値決めの仕組みには問題が無いとしていた。
  • また、ニューヨークで、ヘッジファンドや一般投資家が決めのメンバーを相手取り、値決め価格に不正操作が行われたとして、集団訴訟を起こしたこと。
  • さらに、この価格が重要な世界指標であることからも、イングランド銀行によって行われている「Fair & Effective Market Review(公正で有効な市場のためのレビュー)」で、LIBOR(ロンドン銀行間貸し手金利)同様に、不正操作などが行われた場合に、法律で罰せられる行為とすることを、財務省が勧告。

新たな値決め価格(LBMA Gold Price)とは

  • 新たな金の値決めは、LBMA Gold Priceと呼ばれ、3月20日から開始。銀の値決めは、既に昨年8月に新たな方式に移行済み。
  • 銀同様に、新たな金の世界指標となる価格は今までと同じように、市場参加者の需給のバランスで決定されるものの、新たに電子システムを利用したオークションに基づく方式が利用される。
  • この価格はロンドン貴金属市場協会(LBMA)が所有し、これまで同様に、ロンドン時間午前10時半と午後3時に決定され、発表。
  • 電子システム上で行われるオークションは、インターネット上でレポートされ、このシステムは、ICE Benchmark Administrationが運営、管理。
  • 昨年8月にローンチされたLBMA銀価格は、CME Groupとトムソン・ロイターが管理・運営し、順調に機能中。パラジウムとプラチナの値決めは、12月1日に新システムに移行し、LMEが管理・運営。

LBMA Gold Priceが今までの金値決め価格と異なる点

  • 電話で行われていたオークションが電子システム上で行われることとなったこと。
  • 注文等の詳細記録がシステム上保存され、監査可能。
  • 価格の管理と運営が市場参加者ではないICE Benchmark Administration(IBA)によって行われる。
  • 参加企業は、これまでのブリオンバンク4行(バークレイズ、HSBC、ソシエテ・ジェネラル、カナダのスコシアバンクの子会社のスコシア・モカッタ)に加え、UBSとゴールドマン・サックスの6行。
  • 最小取引単位が400トロイオンスのグッドデリバリーバーから1トロイオンスへ。
  • 取引入力が、顧客の注文を扱うセールスデスクと、自社の注文を扱うトレーダーデスクで異なるために、同じブリオンバンクであっても他の部署の注文内容は見ることはできない。
  • Opening price(オークションの始まりの価格)は、値決めメンバーの議長が決めるのではなく、IBAの専任チームが、それまでのスポット価格や世界の市場の価格を基に決定。
  • 需給のバランスに応じて価格を上下に動かすことを提案する議長は、市場参加者ではなく独立した金市場の専門家であり、IBAの事務所で行う。
  • オークションの結果はICEのサイトで閲覧可能。
  • LBMA Gold Priceを利用し、配信する際に、IBAとのライセンス契約は、2015年9月1日まで必要がなく、費用も発生しない。
  • LBMA Gold Priceは、4月1日よりロンドン銀行間取引金利(LIBOR)同様に、規制当局下の世界指標となり、規制に反した場合は、法律で罰せられること。
  •  LBMA Gold Priceには、監視委員会(Oversight Committee)が設けられ、その委員は下記の通り。
    • 金鉱会社(AngloGold Ashanti’s Groupの経理責任者Rob Hayes氏、Denver Gold Groupの取締役Tim Wood氏)
    • 精錬会社 Johnson Mattheyの部長でLBMAの議長であるGrant Angwin氏
    • ブリオンバンクスコシア・モカッタの取締役Simon Weeks氏
    • IBAのコンプライアンス責任者Emma Vick氏
    • LBMAのCEOのRuth Crowell氏

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ブリオンボールト社のリサーチ部門
オンライン金取引所有サービスを提供する世界有数の英国企業ブリオンボールトの、リサーチ主任エィドリアン・アッシュ、研究員ベン・テイラー、日本市場担当ホワイトハウス佐藤敦子を含む国際市場担当者によって構成されています。